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2021.12.01

【労務】令和3年版過労死等防止対策白書を公表

厚生労働省は「2020年度我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況」(2021年版過労死等防止対策白書)を公表しました。重点業種である自動車運転、外食産業での精神障害事案の分析や労働行政機関などの施策の状況等を紹介しています。産業別にみた労働者の精神的・肉体的負担の推移についてJILPTの調査が活用されています。なお、厚労省は11月を「過労死等防止啓発月間」としてシンポジウム等の開催を予定しています。

「過労死等防止対策白書」は、過労死等防止対策推進法の第6条に基づき、国会に毎年報告を行う年次報告書です。6回目となる今回の白書の主なポイントは以下のとおりです。

厚生労働省では、「過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会」の実現に向け、引き続き過労死等防止対策に取り組んでいくとのことです。

※「過労死等」とは

(1)業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡

(2)業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡

(3)死亡には至らないが、これらの脳血管疾患・心臓疾患、精神障害

■「令和3年版過労死等防止対策白書」の主なポイント

1.本年7月30日に閣議決定された「過労死等の防止のための対策に関する大綱」(以下「大綱」という。)の変更経緯やその内容について報告。

2.大綱において定める重点業種等のうち、自動車運転従事者、外食産業に関する労災認定事案の分析など、企業における過労死等防止対策の推進に参考となる調査研究結果(新型コロナウイルス感染症の影響を含む)を報告。

3.長時間労働の削減やメンタルヘルス対策、国民に対する啓発、民間団体の活動に対する支援など、昨年度の取組を中心とした労働行政機関などの施策の状況について詳細に報告。

4.企業でのメンタルヘルス対策や勤務間インターバル制度の導入など、過労死等防止対策のための取組事例をコラムとして紹介。

■白書の構成

第1章 労働時間やメンタルヘルス対策等の状況

 1 労働時間等の状況

  ・週労働時間80時間以上の雇用者数

令和2年の週労働時間80時間以上の雇用者数は、「全業種」では、令和2年3月及び8月を除き、前年同月を下回った。

業種別にみると、「医療,福祉」では、令和2年3~6月、9~11月で前年同月を上回った。

  ・労働者の肉体的負担の推移

「分析対象業種計」では、肉体的負担が大きいと回答した労働者の割合は、男性より女性が高く、かつ、全ての属性で緩やかに上昇。

業種別にみると、「医療業」、「社会保険・社会福祉・介護事業」で平時から他の業種と比較して高い水準にあったところ、令和2年4~5月には更に上昇し、令和3年1月には一層上昇。

  ・(労働者の精神的負担の推移

「分析対象業種計」では、精神的負担が大きいと回答した労働者の割合は、男性より女性が高く、かつ、全ての属性で令和2年4~5月に大きく上昇し、同年9~10月に一旦低下したものの、令和3年1月に再び上昇。

業種別にみると、「医療業」、「社会保険・社会福祉・介護事業」で平時から他の業種と比較して高い水準にあったところ、令和2年4~5月には更に上昇し、同年9~10月に一旦低下したものの、令和3年1月には再び上昇。

  ・勤務間インターバル制度及び年休の状況

勤務間インターバル制度について「制度を知らない」と回答する企業割合、勤務間インターバル制度の導入企業割合、年次有給休暇の取得率は、前年に比べて改善。

 2 職場におけるメンタルヘルス対策の状況

  ・「メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所割合」及び「ストレスチェック結果を集団分析し、その結果を活用した事業所割合」は増加傾向にあるが、「仕事上の不安、悩み又はストレスについて、職場に事業場外資源を含めた相談先がある労働者割合」は、平成30年と比べて減少。

第2章 過労死等の現状

 1 過労死等に係る労災補償の状況

 2 国家公務員の公務災害の補償状況

 3 地方公務員の公務災害の補償状況

第3章 過労死等の防止のための対策に関する大綱の変更

 (新たな大綱に定めた過労死等防止対策の主な取組等)

 1 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う対応やテレワーク等の新しい働き方を踏まえた過労死等防止対策の取組を進めること。

 2 調査研究について、重点業種等※に加え、新しい働き方や社会情勢の変化に応じた対象を追加すること。また、これまでの調査研究成果を活用した過労死等防止対策支援ツールの開発等のための研究を行うこと。

※ 自動車運転従事者、教職員、IT産業、外食産業、医療、建設業、メディア業界

 3 過労死で親を亡くした遺児の健全な成長をサポートするための相談対応を実施すること。

 4 大綱の数値目標として、「週労働時間60時間以上の雇用者の割合」や「勤務間インターバル制度の周知、導入」に関する目標などを更新する。なお、公務員についても目標の趣旨を踏まえて必要な取組を推進すること。

第4章 過労死等をめぐる調査・分析結果

 1 重点業種・職種の調査・分析結果

  (1)自動車運転従事者の調査・分析結果

  ・労災認定事案の分析

トラック運転者の精神障害事案を具体的出来事別にみると、「1か月に80時間以上の時間外労働を行った」(25.6%)、「悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」(18.0%)、「上司とのトラブルがあった」(18.0%)、「(重度の)病気やケガをした」(17.3%)の順に多い。

※平成22年4月から平成30年3月までに労災認定された道路貨物運送業及び運輸に附帯するサービス業の事案を抽出・分析。具体的出来事については、平成24年4月以降の事案を分析。

  ・労働・社会面の調査(アンケート調査)

平時の業務に関連するストレスや悩みの内容については、トラック運転者やタクシー運転者では「賃金水準の低さ」、バス運転者では「不規則な勤務による負担の大きさ」が最も多い。

新型コロナウイルス感染症の影響で、労働時間が減った者や休日・休暇が取得しやすくなった者が見られる一方で、ストレスや悩みが増えた者も見られる。

  (2)外食産業の調査・分析結果

  ・労災認定事案の分析

外食産業を含む「宿泊業,飲食サービス業」の精神障害事案を具体的出来事別にみると、「1か月に80時間以上の時間外労働を行った」(22.4%)、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」(21.5%)、「仕事内容・量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」(18.7%)、「2週間以上にわたって連続勤務を行った」(15.4%)の順に多い。

※平成22年4月から平成31年3月までに労災認定された「宿泊業,飲食サービス業」の事案を抽出・分析。具体的出来事については、平成24年4月以降の事案を分析。

  ・労働・社会面の調査(アンケート調査)

平時の業務に関連するストレスや悩みの内容については、スーパーバイザー等や店長では「売上・業績等」が最も多く、店舗従業員では「職場の人間関係」が最も多い。

新型コロナウイルス感染症の影響で、労働時間が減った者や休日・休暇が取得しやすくなった者が見られる一方で、ストレスや悩みが増えた者も見られる。

 2 労災・公務災害の支給決定(認定)事案の分析結果

  ・自殺事案(未遂を除く。以下同じ)について、自殺の時期を曜日別にみると、「月曜日」(17.5%)が最も多かった。

  ・自殺事案を発病から死亡までの日数別にみると、「6日以下」が47.3%であった。

  ・自殺事案について、労災認定の疾病に関して、医療機関への「受診歴なし」が64.0%であった。特に、「極度の長時間労働」があった事案については、医療機関への「受診歴なし」が76.1%であった。

 3 疫学研究等の分析

第5章 過労死等の防止のための対策の実施状況

 新型コロナウイルス感染症の影響にも留意しながら、以下の対策を実施

 1 労働行政機関等における対策

  ・長時間労働の削減に向けた取組の徹底

月80時間を超える時間外労働の疑いがある企業等に対する監督指導を徹底

  ・過重労働による健康障害の防止対策、メンタルヘルス対策、ハラスメント防止対策

 2 調査研究等 ※研究結果は、第4章に掲載

 3 啓発

  ・ポスターやパンフレットなど多様な媒体を活用した周知・啓発

  ・大学・高等学校等の学生等への労働関係法令等に関する周知・啓発

  ・勤務間インターバル制度の導入促進

助成金の周知、「勤務間インターバル制度導入・運用マニュアル」を活用した制度の導入促進

  ・働き方の見直しに向けた企業への働きかけの実施

  ・年次有給休暇の取得促進

  ・ウィズコロナ・ポストコロナの時代におけるテレワーク等の新しい働き方への対応

職場における新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止対策を徹底するため、テレワーク・時差出勤の推進等を含む「取組の5つのポイント」について、都道府県労働局・労働基準監督署において取組を働きかけるとともに、累次にわたって労働団体や経済団体に対して要請を実施

テレワークガイドラインや副業・兼業の促進に関するガイドラインを改定、フリーランスが安心して働ける環境の整備のためのガイドラインを策定

  ・商慣行・勤務環境等を踏まえた取組の推進

教員のメンタルヘルス対応等に関する留意事項をまとめた通知を各教育委員会に発出

  ・公務員に対する周知・啓発

新型コロナウイルス感染症への対応について、職場における勤務時間管理を含めた対応や、保健師、消防職員、医療機関に従事する職員等の地方公務員のメンタルヘルス予防のために活用できるメンタルヘルス対策サポート推進事業等について、各地方公共団体に周知を実施

 4 相談体制の整備等

  ・労働条件や健康管理に関する相談窓口の設置

「労働条件相談ほっとライン」(平日夜間・土日祝日に無料の電話相談窓口)において、違法な時間外労働等、労働条件に関する相談対応を実施

働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」において、メンタルヘルス不調や過重労働による健康障害等について、SNS(令和2年度本格実施)、メール、電話(令和2年度に回線数を1.6倍増)による相談対応を実施

「フリーランス・トラブル110番」(令和2年度開設)において、フリーランスと発注者等との契約等のトラブル等について相談対応を実施

 5 民間団体の活動に対する支援

  ・過労死等防止対策推進シンポジウムの開催

「全国過労死を考える家族の会」、「過労死等弁護団全国連絡会議」等と連携し、全国47都道府県で、過労死等防止対策推進シンポジウムを開催(48回)

  ・過労死遺児交流会の開催

「全国過労死を考える家族の会」と連携し、遺児及びその保護者を対象とした相談等を行う過労死遺児交流会(令和2年度はオンライン)を開催

詳しくは、こちらをご覧ください。

参照ホームページ[厚生労働省]

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21805.html

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